投稿者:神楽坂フジ丸さん

  • Q

    ARTAS -SYSTEM

    2012.11.09

    いつもお世話になっています。神楽坂フジ丸です。

    随分前に、今川先生とは、この掲示板上で一度やり取りをさせて頂きましたが、先生は覚えていらっしゃるでしょうか?

    今回この掲示板に投稿したのは、ぜひ今川先生の、ご見解を伺いたく参上致しました。

    学会出席の折などに新製品の展示会などで実物を、ご覧になった事もあるかと思いますが、米国の Restoration Robotics社が開発した植毛支援ロボット ARTAS®-SYSTEM™ についてです。

    以前オムニグラフトという医療機器に対して今川先生は懐疑的な見方をされていたと記憶していますが、私の記憶で間違いないでしょうか?

    そしてARTAS-SYSTEM について、どのような感想をお持ちでしょうか?

    高価な医療機器だと思いますが、先生と同じ学会のドクターも使用しているようです。


    また毎度の質問で先生もウンザリされているかと思いますが、Acell についてです。

    一般的にはAcell は傷跡の修復作用があると考えられていますが、米国の医師(ABHRSメンバー)がAcell とPRPを併用する事で発毛作用があると主張しています。

    同じ学会の他の先生方は、この件に関して懐疑的な見方のほうが大勢を占めているのでしょうか?

    お時間ある時で結構ですから、ぜひ今川先生の、ご見解を伺えればと存じます。

  • A

    Re:ARTAS -SYSTEM

    2012-11-10

    神楽坂フジ丸様

    ご投稿ありがとうございます。

    オムニグラフトは20世紀に登場したカルビトロンというマシーンの後継機種ですが、帯状のドナー頭皮をヘアトームで株分けする方法とFUE(ダイレクト法と呼んでいるようです)の2つの方法が選択できるものです。
    前者はフォリキュラーユニット(毛根単位)に関係ないミニマイクロ植毛の概念ですが、これとFU株の概念で行うFUEを患者自身に選択させるというのは少々無理があるように思います。
    ただ前者の結果があまりにも悪いのと手術費を高く設定できるという理由で最近はほとんどダイレクト法のみ行っているもようです。
    FUEだけを行うのであればもっと手軽な機械も数多くありますが、それ以前にそのクリニックの植えつけ技術のレベル自体に問題があると思います。

    ARTASはFUEを自動的に行うロボットで開発中からアメリカ本社の医師や技術者が当院に訪れて私共へそれについてのコメントを求めてきました。
    先頃販売を開始したおりにも毛根切断率が8%程度に下がったということで、海外の植毛医からも悪い評判はきこえてきません。
    ただ日本人のヘアは平均して太く、毛根も深い(5~5.5㎜ちなみに白人は4㎜)ので白人と同じ毛根切断率なのかを実際に見て確認したいと考えております。

    Acellは以前ほどのフィーバーもなく効果に対してネガティブな論文もあったりして、正直導入の意欲が少し削がれてしまいました。
    一方欧米でもPRP(多血小板血漿)を導入している植毛医はけっこうな数にのぼりますし、我が国を含め頭髪以外の医療分野でも盛んに応用されています。
    これは理論的にもHARG療法よりずっと説得力のある方法のような気がしますし、効果への確信がもう少しあればいずれ導入したいと考えています。

    院長 今川

  • Q

    Re:Re:ARTAS -SYSTEM

    2012.11.11

    いつもお世話になっています。神楽坂フジ丸です。

    ご多忙のところご回答頂きましてまして誠にありがとうございます。

    Restoration Robotics社が開発段階から、わざわざ先生のご意見を聞くために訪日していたとは驚きました。

    装置の性能は非常に重要ですが、機械化の本来の目的はコストダウンではないかと思います。

    通常、機械の導入によるメリットは作業のスピード化や労働力の削減がおもな目的です。

    そして物の価格のプライスダウンが実現できてはじめて消費者はその恩恵を受ける事となります。

    しかし医療分野では、大量生産やオートメイションの概念は必ずしも当てはまらいようですし患者は普通の消費者とは違います。

    CTやMRIなどの画像診断装置のように高価ではありますが通常目視できないパーツを画像で診断できる事によるメリットは医師にとっても患者にとっても非常に大きいものです。

    ARTASが単に省力化のみの追求だけではなく、手技を凌駕する性能があれば高価でも普及するかもしれませんね。


    Acellに関しては、それを受けた日本人患者のブログの方向性が定まらない為にネット上でもトーンダウンしています。

    新たな体験者のレポートでもあれば再燃の可能性はあるかとは思いますが、学会に出席されている先生方も静観論や慎重論が多いのであれば普及にはまだまだ時間がかかりそうですね。

    またPRPですが国内の美容外科、美容皮膚科でもスキンケアで多く取り入れられていまが、スカルプではごく少数のクリニックのみのようです。

    どのような治療法でも言えることですが、患者本人が「やって良かった!」思える事が重要ですね。

    お忙しい中、丁寧にお答え頂き感謝する次第です。

  • A

    Re:Re:Re:ARTAS -SYSTEM

    2012.11.12

    神楽坂フジ丸様

    医療分野では熟練した医師とロボットとを比較すると大抵前者の方が良い結果を出します。
    従って例え話で恐縮ですが、寿司店を始めようとするビジネスマンへなら寿司ロボットは売れるかもしれませんが、銀座の老舗の寿司屋にセールスに行っても買ってもらえる確率は0でしょう。
    ただ話はそれほど簡単ではありません。美容医療全般に言えることですが、クリニック間の競争が激しくなるにつれて、クリニックは興味をひく趣向(広告効果)にとびつきそれを利用したいという誘惑にかられるでしょう。
    日本人の患者は概して機械に対して好意的ですし、FUEは同じ作業の繰り返しなので
    ロボットの動作が正確なら導入のメリットも大いにあります。第一にロボットは労働環境に不平も言わず働き続けます。
    人件費というのは植毛クリニックで大きな比重をしめますからこれも大きな魅力です。
    一方業者は何億円も開発費用をかけているので回収しようとして高価格を設定しますが、購入費以外に施術のたびに一株あたりいくらで加算されるシステムになっており、クリニックは将来にわたって費用を払い続けることになります。
    これは欧米のマシーンを買う時にはよくあるシステムです。
    さらに日本は地理的に言っても運搬費、メンテナンス費用がアメリカより更に割高なります。
    当然既にFUEを行っている医師は購入の条件が良くなければ導入する気になりませんが、反対にパートタイム植毛医(植毛を専門としているわけではなく時々植毛をしているという意味です。)は宣伝効果を狙って余裕があれば買いたいと思うかもしれません。ただロボットで株を作れても植えつける過程では苦戦すると思いますしそれが結果に反映してくるはずです。



    院長 今川

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