植毛の歴史と種類

植毛の歴史

『○○植毛法とは、どんな方法ですか?』―これは患者様からよく受ける質問です。そこで、まず植毛法の正しい分類についてご説明しましょう。

植毛の歴史は60年ほどあり、10年くらい前までは世界の植毛技術の主流は『パンチ式植毛法』でした。
これは直径3~4mmの大きさで、毛根ごと採取した10本ほどのヘアの『株(=グラフト)』を、そのまま無毛部分に移植するというものです。紙に穴を開けるときに使うパンチの構造を思い出していただくとわかりやすいかもしれません。ただ10本以上の大きな株だと、生え際が不自然になるのが難点でした。

このような短所を補うため、1株をより小さくする方法が考案され、それぞれ『ミニグラフト』『マイクログラフト』と名づけられました。これらはパンチグラフトの補助的な方法として1990年頃から用いられはじめ、次第にミニ・マイクログラフトのみで行われるようになりました。

さらに、1995年頃からリマー(B.Limmer), バーンスタイン(R,Bernstein), ラスマン(R.Rassman)らが、新しい概念としてヘアの解剖学的単位、すなわち『FU』(フォリキュラー・ユニット)ごとに顕微鏡下で株分けをする『FUT』(フォリキュラー・ユニット・トランスプランテーション)を提唱し、またたく間に世界の植毛医に受け入れられました。

植毛の現在の種類

現在、欧米では約半数のクリニックがこの方法を行っていると言われています。よって、現在行われている植毛法は、次の3種類になります。

マイクロ・ミニ植毛術

採取したドナーの頭皮を恣意的に一定のサイズに切り分けて株をつくるFUT以前の概念です。現在でも自動植毛機のヘアトームを使った株分けの場合はこれにあたります。

FU株だけを使う植毛術

現在の標準術式とされています。FUT、単一植毛法などがこれにあたります。まず、すべての株を1つのFUごとに株分けします。1本毛、2本毛、3本毛など、生えている自然の状態でFUごとにばらしていく方法です。FUEも概念的にはこれにあたります。

FU株とMFU株の複合移植による植毛術

採取したドナーの頭皮を恣意的に一定の比率でFU株とMFU株に切り分けて株をつくる方法です。フランチャイズクリニックの「○○○式植毛」といった商標のようなものがこれにあたります。

FUTの実際

移植毛を頭皮ごと切り取り、それを顕微鏡下でフォリキュラー株に株分けし植えつける方法です。 1995年にリマー(B.Limmer)、バーンステイン(R.Bernstein)、ラスマン(W.Rassman)らが提唱し、現在の植毛手術の7割以上の症例がこの方法で行われています。当院でもこの方式を採用しています。

FUTのドナー採取の流れ

FUTには次の3つのステップがあります。 *手術は一日で終了し、入院の必要もありません。
(1)ドナー採取→(2)株分け→(3)植え込み

  • 後頭部・側頭部よりドナー採取

    1)後頭部・側頭部よりドナー採取

  • 採取したヘアを

    2)採取したヘアを

  • 脱毛した部分に植え込み

    3)脱毛した部分に植え込み

FUTのドナーの採取方法

ドナーの採取は正確なデザインが重要に

  • まず、植毛する本数、または株数に合わせて、後頭部から帯状のドナーを採取することから始まります。
    ドナーの密度は、80本/から200本/で2倍以上の個人差があり、また後頭部と側頭部でも密度の違いがあるなど、適当に採っていると誤差が生じてしまいます。
    そのため、ドナーを採取する場所の毛を短く刈り込んで密度を計測し、その後、正確に採取場所をデザインしていきます。

  • ドナーの採取は正確なデザインが重要に

たとえば、160本/㎠密度がある方が2000本の植毛をする場合、12.5㎠ドナーが必要になります。それを1㎝幅でドナーを採取するとすれば約13㎝の傷になり、1.2㎝幅なら11㎝の傷になります。
また、ドナーの密度が10%少なければ、傷の長さも10%伸びることになり、逆に10%多ければ、傷も10%短くてすむことになるのです。

縫合までに要する時間は約30~40分ほどになります。
縫合には、以下の3つの方法があり、主に(2)と(3)を使用しています。
 (1)ステプラー(ホッチキス) (2)ナイロンのような吸収しない糸 (3)吸収する糸
なお、(3)の場合、糸が溶けるまで3~4週間かかります。

ドナーは将来を考慮し、両耳の上部を曲線で結んだラインから下より採取するのが安全

  • 「どこからドナーを採るのか」―
    これは、植毛を行っている医師でも意外に神経を払わないことが多いようです。
    ときどき他院で植毛を行った方の状態をチェックする機会があるのですが、考えられないようなドナーの傷を目にすることがあります。

    ドナーの傷というのは、横方向は目立ちにくいのですが、縦や斜めの方向だと目立ちやすいものです。また、横方向でも後頭部のあまり高い位置から採ると、将来そこのヘアが抜けたり、薄くなったときに、ドナー部分の傷が見えてしまう可能性があります。

  • ドナーは将来を考慮し、両耳の上部を曲線で結んだラインから下より採取するのが安全

薄毛の程度は人によって大きく異なり、かなり進んだ方の場合、後頭部のヘアが数㎝の幅しか残っていないこともありますので、ドナーの採取には、こうしたさまざまな要素を考慮する必要があります。 さて、将来に問題のない安全なドナーを採取する範囲というのは、厳密にいうと、両耳の上部を曲線で結んだラインから下になります。もちろん、側頭部からもドナーを採ることは可能です。

FUT治療のもっと詳しい流れを知りたい方は、「治療の流れ」をご確認ください。

FUEとは

FUTでは、後頭部から帯状にドナーを採取し、それを顕微鏡下で株分けします。
一方FUEは、小さなパンチでひとつひとつのフォリキュラー株を直接くり抜く方法で、2001年にバーンスティーン(R.Bernstein)とラスマン(W.Rassman)医師が発表、最普及してきた方法です。

FUEのドナー採取の流れ

  • パンチで直接1本1本の毛髪を
    くりぬきます。

    FUEのドナー採取の流れ
  • 特殊なピンセットでドナーを
    傷めないように引きぬきます。

    FUEのドナー採取の流れ
    FUEのドナー採取の流れ

    抜いた直後の株(1本毛)です。この直後、温度調節された食塩水に浸します。

  • FUE法のくり抜きが終わった状態です。空いた穴は自然に閉じてやがて髪の毛で隠れ目立たなくなります。

    FUEのドナー採取の流れ

FUEが適しているケース

  • 短いヘアスタイルの人
  • 頭皮の固い人
  • ボディヘアを使いたい人
  • 理由はともかく、本人がFUE以外の方法を選択したくないケース