第12回日本再生医療学会総会
場所:横浜
パネルディスカッション:毛髪再生の最先端 「植毛医療の現状」
植毛術においては1960年初頭から30年間にわたりmacrograftが使われ続けたが、1980年代後半にその不自然さを克服する手段としてより小さな株を併用する試みがなされ、1991年にUebelはmicrograftとminigraftのみによる施術を 報告した。
その後1994年にLimmerは帯状に採取された頭皮を頭髪の解剖学的用語であるFollicular Unit(FU)毎に 株分けするFollicular Unit Transplantation(FUT)の概念を提唱し、本術式はまたたく間に標準術式となった。
さら にRassman、Bernsteinらは稲葉の手技を発展させたFollicular Unit Extraction(FUE)を2001年に発表し、ドナー部 に線状瘢痕ができない利点が注目され急速に普及していった。
FU株のトレンドによって“自然さの達成”という目標は克服され、もう一つの課題である“十分な濃さの達成”も高密度植毛術により1度の施術のみで満足すべき濃さ が得られる症例は増加しつつある。一度の施術における株数も次第に増加し最近は2500株以上と定義されるメガセッ ションは日常的に行われるようになったが、欧米では4000株以上を意味するギガセッションという用語も登場している。
多量植毛術は治療可能な症例を大幅に増加させたが、移植毛の1対1の移動である以上やはりドナー部による 制約を受ける。AGAの影響を受けない安全な領域から採取されるFUの総数は6000程度であり、30,000のFUの喪失があるとされる男性型脱毛症の進行例(NorwoodVI 〜 VII)では、全脱毛部位への十分な濃さの達成は不可能である。
移植毛の採取の限界については細胞培養などによる毛包再生療法が解決策になりえようが、現時点では多量植毛術 の徹底、ドナー採取や株分け過程での毛根切断などによる移植毛の喪失を最小限にする工夫、移植過程での生着率 の向上などのさらなる努力が求められる。